トップページ > 診断と治療 > 診断基準と解説

診断基準と解説

シェーグレン症候群の診断基準(1999年厚生省班)

1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)口唇腺組織で4mm²あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
B)涙腺組織で4mm²あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上

解説

2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)唾液腺造影でStage I(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
B)唾液分泌量低下(ガム試験にて10分間で10mL以下、またはサクソンテストにて2分間で2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

解説

3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)シルマー試験で5分に5mm以下で、かつローズベンガル試験(van Bijsterveldスコア)で3以上
B)シルマー試験で5分に5mm以下で、かつ蛍光色素試験で陽性

解説

4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A)抗Ro/SS-A抗体陽性  
B)抗La/SS-B抗体陽性

解説

【診断基準】

上の4項目のうちいずれかの2項目以上が陽性であれば、シェーグレン症候群と診断する。

ページの先頭へ戻る

シェーグレン症候群の診断基準(1999年厚生省班)の解説

総合解説

シェーグレン症候群の患者さんは、免疫システムに異常を有するという共通の病因を有していますが、実際に現れる症状は様々です。また、シェーグレン症候群だけに特異的に検出され、かつ100%近い陽性率を示す固有の検査項目・手法がまだ確立されていないことから、複数の検査項目を組み合わせて診断を行うことになります。 診断基準は、「唾液腺もしくは涙腺の病理検査(顕微鏡による精密検査)」「唾液分泌能の検査」「涙液分泌能の検査」「自己抗体の検査」の4つに大別され、このうちの2項目以上が陽性(異常)であれば、シェーグレン症候群と診断することになっています。 これら4つの項目は、それぞれシェーグレン症候群の代表的徴候であり、診断における有力な要素なのですが、他の疾患でも陽性を示すことがあるため、1項目が陽性を示しても、シェーグレン症候群として確定的な診断をするには不十分であると考えられています。 そこで、「これらの4項目のうちいずれか2項目以上が陽性であること」という基準を設けることにより、シェーグレン症候群の患者さんだけを高い精度で検出できるようになるのです。しかし、この診断基準もシェーグレン症候群を100%的確に診断することは出来ません。およそ90〜95%程度の診断率であり、あてはまらない場合は担当医の判断が重要となります。

ページの先頭へ戻る

1. 生検病理組織検査の解説

シェーグレン症候群の代表的症状である口腔乾燥症(ドライマウス)、眼乾燥症(ドライアイ)に関して、組織学的に調査する検査項目です。実際の検査にあたっては、口唇小唾液腺組織(項目A)もしくは涙腺組織(項目B)のいずれかの組織を採取し、顕微鏡での観察により判定をします。 シェーグレン症候群では、腺の導管周囲に免疫細胞であるリンパ球が異常に多く浸潤しており、「4mm²あたり1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上」の状態の場合には、シェーグレン症候群の陽性所見として判定されます。

ページの先頭へ戻る

2. 口腔検査の解説

口腔乾燥症(ドライマウス)の状態を調査する検査項目です。 唾液腺造影の画像によって腺組織の状態を診断する方法(項目A)か、唾液分泌能に関する検査(項目B)のいずれかに異常がある場合には、異常所見として判定されます。ただし、項目Bに関しては、唾液腺シンチグラフィー(安全な放射性同位元素を用いた画像検査)を併せて行うことになっています。

ページの先頭へ戻る

3. 眼科検査の解説

眼乾燥症(ドライアイ)の状態を調査する検査項目です。 シルマー試験(まぶたに試験紙をはさみ、5分後に試験紙へ染み込んだ涙液量を測定する試験)に、ローズベンガル試験もしくは蛍光色素試験のいずれかを併せて行い、判定を行います。 シルマー試験では、試験紙に染み込んだ涙液量を試験紙が濡れた長さで評価し、5mm以下の場合には異常所見として判定されます。 ローズベンガル試験及び蛍光色素試験では、これらの液によって眼の角結膜上皮の障害された部位や粘液が付いていない乾燥部位が染色される性質を利用して、染色された状態から病状を評価します。 シェーグレン症候群では、染色部位(乾燥部位)が存在している様子が観察されますが、これは自己免疫による涙液の減少により点状に損傷を受けていることを示しています。

ページの先頭へ戻る

4. 血清検査の解説

シェーグレン症候群では、血中に「抗Ro/SS-A抗体」「抗La/SS-B抗体」と呼ばれる自己抗体が比較的高率で検出されます。そこで、採血を行い、これらの自己抗体の検出による判定をします。 シェーグレン症候群の病因に直結する要素である自己抗体を検査することは、診断に対して非常に重要な要素です。しかし、「常に陽性とはならない」「他の自己免疫疾患でもこれらの自己抗体が出現することがある」等の理由から、他の検査項目と併せて総合的な判断と解釈をする必要があると考えられています。

ページの先頭へ戻る

病気の基礎知識 診断と治療 患者さんへのアドバイス専門医リスト よくあるご質問 関連医学用語集関連書籍監修者コラム