トップページ > よくあるご質問
国はシェーグレン症候群を2015年1月に「指定難病」と認め、306の疾病(2015年7月実施)の中に指定しています。
患者さんの医療費助成に要する費用の1/2を国が負担することが法律で定められました。
さらに、患者さんの自己負担の割合や負担の上限額が変わりました。
「指定難病」の場合、医療費の自己負担割合は従来の3割から2割に引き下げられました。自己負担額の上限は、従来は外来と入院の違いや重症度、患者さんの所得などによって分けられていましたが、新たな制度では外来と入院の区別をなくし、重症度や世帯の所得に応じて自己負担額の上限額が決定されます。指定難病の医療費助成の支給認定を受けるには「診断書」をつけて自治体の窓口への申請が必要になります。
指定難病の医療費助成手続は下記のサイトで詳しく説明されています。
IBD-INFO(潰瘍性大腸炎・クローン病の情報サイト)
最新情報は厚生労働省のHPで確認ください。
厚生労働省(指定難病)
1993年に行われた厚生省の特定疾患自己免疫疾患調査研究班の結果では、年間受療患者数17,000人でした。男女比は約1:14で女性が多く、40〜60歳の患者さんが多いという特徴があり、人口10万人あたりの発症率は、女性で約26人になりました。
厚生労働省の発表では患者数は次第に増加しており、2002年では年間78,000人となっています。しかし、この数字は諸外国より明らかに低く、診断がされていない潜在的な患者さんが相当いるのではないかというのが一般的な見方です。関節リウマチ患者さんの約20%に続発性シェーグレン症候群があることや原発性の患者さんが続発性の患者さんの2倍以上あることなどを考えると、潜在的なケースも含めると、患者数は30万人以上と専門医の間では推測されています。
いくつかの調査・報告がありますが、関節リウマチの患者会によるリウマチ白書によると関節リウマチ患者さんの18%がシェーグレン症候群と診断されたと記載されています。およそ20%と専門医の間では考えられています。
関節リウマチを発症後に眼乾燥症(ドライアイ)や口腔乾燥症(ドライマウス)などのシェーグレン症候群の症状が現れることがあります。時期については明確ではありません。関節リウマチの約20%がシェーグレン症候群を患っています。しかし、逆にシェーグレン症候群に関節リウマチを発症してくることはまれと考えられていますが、新しい抗CCP抗体の検査の導入により、関節リウマチの発症も以前よりは多いと考えられるようになりました。
一般的に、関節リウマチが発症してからシェーグレン症候群の症状が現れることが多く、シェーグレン症候群が先行することはまれと考えられています。
関節リウマチの新しい治療法として注目される注射用生物製剤が、海外で研究(臨床試験)が行われましたが、シェーグレン症候群に対して効果は認められませんでした。
シェーグレン症候群の患者さんで関節痛を訴える方は約60%あり、かなり強い関係があると考えられます。関節炎を発症することもあり、多くは複数の関節が痛む症状が現れます。しかし、関節の破壊、骨変形などの関節リウマチに見られる重症病変になることはありません。
起床後しばらくの間、関節を動かすと通常と違った抵抗や違和感がある状態がしばらく続く症状(朝のこわばり)は、シェーグレン症候群でも生じることがあります。 しかし、関節リウマチに見られるほど長時間続くことはありません。
シェーグレン症候群の患者さんで慢性的な疲労感を訴える方が約80%います。これは他の自己免疫疾患と比べても明らかに高率で、シェーグレン症候群と慢性疲労との間には強い関係があると考えられます。
シェーグレン症候群の男女比は、約1:14と圧倒的に女性が多く、婦人病の印象が強いことは確かですが、男性の患者さんもあり、女性患者さんと同じような症状がでます。
シェーグレン症候群は膠原病類似の自己免疫疾患であることから膠原病内科、リウマチ内科、血液内科などの内科系各診療科に、乾燥症状の関係から眼科、皮膚科、耳鼻科、歯科・口腔外科などの診療科に専門医がいます。 詳細については、当サイトの「シェーグレン症候群専門医リスト」をご参照下さい。
体の細胞と細胞とを結合させている組織を結合組織といい、この結合組織には膠原線維と呼ばれる成分が含まれています。この膠原線維にフィブリノイド変性や粘液性膨化が生じるという共通の特徴を有する疾患群の総称を「膠原病」と呼んでいます。したがって膠原病とは単一の疾患をさすのではなく、病変の成立が共通した組織に生ずる複数の疾患を示しています。
古典的膠原病として知られている代表的な疾患として、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病、血管炎などがあります。
シェーグレン症候群は、古典的膠原病には属しませんが、膠原病類似疾患に属し、約1/3の患者さんで膠原病を合併しているのが特徴です。
シェーグレン症候群の病態は非常に多様なため、単独の検査で確定診断が可能となる方法がまだ見つかっていません。そこで、眼乾燥、口腔乾燥、口唇小唾液腺生検、血液データを組み合わせることで、より精度の高い診断を行うことが可能になります。シェーグレン症候群において高率に陽性を示す検査を複数組み合わせることで、より精度の高い診断を行うことが可能となります。日本では厚生省の1999年に改訂した診断基準を使用しています。世界的には各国の協力にもかかわらず統一した基準が作成されていません。それほど症状や病態が複雑であるということです。現在世界9カ国で行っているSICCAプロジェクト(国際シェーグレン症候群研究)の結果がまとまれば世界共通の診断基準が出来る予定です。
シェーグレン症候群が原発性シェーグレン症候群(他の膠原病の合併がない状態)か、続発性シェーグレン症候群(他の膠原病の合併がある状態)であるかによって大きく状況は変ります。
原発性シェーグレン症候群では、眼乾燥症(ドライアイ)、口腔乾燥症(ドライマウス)などが主症状となります。また、他の部位の乾燥症状、関節痛、疲労感等が現れることがあります。この他、肺、甲状腺、肝臓、腎臓等の臓器に自己免疫による障害が生じることもあります。
続発性シェーグレン症候群では、これらの症状の他に、合併している膠原病の諸症状が現れます。最も頻度が高いのは、関節リウマチの合併です。
基本的には、乾燥症状を押さえたり、現れた症状の制御・緩和を目的とした種々の療法が行われます。病気を根本から取り除く治療法は現在まだありません。病気の状態が進んでいるときや活動性が強いときには活動性を抑える治療法として副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を使用します。しかし、病変が軽度のときやおとなしいときは、これらの薬剤はあまり使用されません。
眼乾燥症(ドライアイ)には種々の点眼薬を用いたり、口腔乾燥症(ドライマウス)には人工唾液や唾液を増やす作用のある薬が使用されます。また、シェーグレン症候群で生じる関節痛・関節炎は、軽度なことが多いため、非ステロイド性抗炎症薬が使われます。他の種々の臓器病変に対しては、それぞれ臓器特有の治療法があります。
精密検査は外来の受診で行えます。ただし、様々な検査を行いますので、通常、何度か受診をして頂くことになります。入院でまとめて検査を行うと数日で済みます。
現在は、現れた症状の制御・緩和を目的とした対症療法を主体に治療が行われていますが、病気がひどい時や活動性が高いときには、膠原病と同じようにステロイド薬や免疫抑制薬が使用されます。特に最近はアメリカを中心にシェーグレン症候群に対する関心が研究者間で高くなり、研究の進歩で新しい薬剤が見つかるなど、年々状況は良い方向へ進んでいます。また、現在、世界中の研究者によって、この疾患が遺伝子レベルで研究されており、将来的には根治治療(完治)も可能となることが期待されています。
先輩患者や医師を通じてシェーグレン症候群を正しく理解すること、他の患者さんと積極的につきあって孤独にならないこと、悲観的になることなく、積極的に生活をエンジョイするよう前向きの人生を生きること、結果として疾患とうまく付き合っていくことが大切です。さらに、信頼できる医師の診察を継続的に受けることも重要です。なぜなら、世界中の研究者達の努力によって、この疾患の治療技術は年々着実に向上しており、長期間診察を受けないと最新の治療を受けられなくなる恐れがあるからです。
急激に進行することはあまりなく、多くの場合、症状に山と谷があり、これを繰り返していくという慢性的な経過をたどります。シェーグレン症候群の患者さんの長期経過は、10年から20年たっても乾燥症状やその他の病変に変化も進行もない人(約70%)と10年から20年の間に、乾燥症状が徐々に進行したり、新しい病変が加わったりする人(約30%)があります。急激に進行することはあまりありませんが、ごく一部に急激な悪化を来たす患者さんがあります。このような人は入院による治療が必要です。
患者さんの約半数は乾燥症状だけであり、軽い検査値の異常を含め何らかの病変がある人が残りの半数です。10〜20年経過を診ていくと、初めと同じで何も変化を起さない患者さんが約40%もありました。精密検査をしていくうちに、検査値だけに異常が認められた人が約30%、何らかの新たな病変が発見された人が約30%ありました。この病変も軽いものから重篤なものまで様々でした。しかし、症状が急激に増えていくことはありませんが、定期的な診察が必要です。
複数の症状が現れることはよくあります。ただし、患者さんによって現れ方は様々であり、明確な規則性を見出すことは困難です。
眼乾燥症(ドライアイ)、口腔乾燥症(ドライマウス)以外に、鼻、咽頭、喉頭、気管支、皮膚、膣等に乾燥症状が見られます。鼻の乾きとしては粘膜にかさぶたができたり、出血したりします。
咽頭、喉頭、気管支の乾燥で乾いた咳が良く出ることがあります。皮膚乾燥はかゆみとして出ますが、高齢による皮脂の減少でも起こります。また膣乾燥を訴える方も多くいますが、更年期障害、高齢などの他の原因の影響も大きいと考えられ、原因を調べる必要があります。シェーグレン症候群以外の原因として、急性、慢性炎症、脱水を起す病気、糖尿病、加齢状態、薬剤、神経症などがあります。また冬の気候など他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による鑑別が必要です。
発病要因として、遺伝的素因、環境因子(ウィルス等)、免疫異常、ホルモンなどが挙げられていますが、いずれも単独で発病を説明することは困難です。したがって、これらが複合的にからみあって発病に至ることが推定されています。
シェーグレン症候群が遺伝することはありません。過去の疫学調査から、シェーグレン症候群の家族内発病は約2%程度であることがわかっています。
遺伝的素因は発病に何らかの影響があると考えられますが、近親者に発病者がいても発病しないのが普通で、他の素因の影響が大きいことが示唆されています。他の素因としては、環境因子(ウィルス等)、免疫異常などが考えられ、これらが複合的にからみあって発病に至っているのではないかと推定されます。
シェーグレン症候群が伝染することはありません。
まれですが、シェーグレン症候群が小児に発症することがあります。
小児では乾燥症状がほとんどなく、発熱、皮疹、関節痛などの症状や検査値の異常から診断される場合がほとんどです。小児や15〜6歳の若い人にもシェーグレン症候群が発症することが最近注目されています。また20代、30代の比較的若い患者さんもみられますが、共通していることは眼乾燥や口腔乾燥症状がほとんどないことです。
飛行機などの客室内は湿度が低いため、シェーグレン症候群の患者さんにとって、かなりつらい環境であると考えられます。
したがって、旅行の準備の際には、このことを念頭において、乾燥防止対策(各種医薬品、医療用具類)の準備をしておくことが大切です。
シェーグレン症候群の母親体内で産生された自己抗体(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体)が胎盤を通過して胎児に移行することがあります。
子供に現れる影響としては皮膚の紅班があり、まれに心ブロックとして不整脈が現れることもあります。紅班は数ヶ月で自然に消えます。心ブロックはペースメーカーなどの治療が必要な場合もあります。しかし、発症の頻度はかなり低いものです。
シェーグレン症候群の患者さんの分娩・出産は、普通は問題ありませんが、これらのことについて、専門医との事前の相談が大切です。
特定の症状の緩和効果を有するものはあるかもしれませんが、疾患自体を治癒できる療法はないと考えられます。
世の中には、難治性疾患の患者さんを狙った悪質な民間療法も少なくなく、特に高価なものには注意が必要です。例えば、関節リウマチが治癒できることをうたい文句にしている民間療法がありますが、医学界で効果が確認されているものはありません。もし、本当に治癒した患者さんがいたとしても、診断自体が間違っていて、実は病気ではなかったことが疑われます。安易にこうした民間療法に傾注するのは非常に危険ですので、必ず主治医に相談して下さい。
疲労感と一緒に周期的に気分が落ち込むのは、シェーグレン症候群の患者さんによくある症状です。
うつ病になったことがあると答えたかたが約20%もありました。趣味を楽しむも良し、ご自分に合った適度な運動をするも良し、会食に出掛けるのも良し、患者さんの会などを利用して話し合うのも良いでしょう。ストレスを解消できる何かを見つけることが大切です。何よりも積極的に生活を楽しみ、前向きに生きるためにはどうしたら良いかという発想を持って下さい。
通常、問題はありません。しかし、体調、アレルギー、肺の合併症、副腎皮質ホルモン薬などの治療薬の影響を考慮するなど、医学的な判断が必要となりますので、主治医にご相談下さい。
「シェーグレンの会」という患者さんの会があります。
東京、京都、金沢で会合が定期的に開催され、あわせて会報も発行されています。この会合では、専門医及び有識者による特別講演、質疑応答、食事会などが行われ、いわば患者さん同士の情報交換の場として運営されています。
患者会の情報は、インターネット上で公開されています。
シェーグレンの会ウェブサイト
※2010年より事務局が日本大学血液膠原病内科に移りました。
(TEL:070-5082-7185)
簡単な方法としては、「シェーグレンの会」(患者さんの会)に参加する方法と、「インターネット」を利用する方法があります。インターネットに関しては、患者さんが制作されたホームページにアクセスすると、「同じ疾患に悩むメール友達募集中」というような呼びかけを見つけることが可能です。患者会の連絡先はこちらをご確認ください。
「主治医に相談する」「インターネットを用いる」「書籍を購入する」などの方法で相当の情報量を集めることが可能です。
書籍に関しては、当サイトの書籍リストもご参照下さい。
自分の組織(自己)に対する抗体のことで、シェーグレン症候群をはじめとした自己免疫疾患で出現します。
通常、免疫は、「自己」と「非自己」を識別し、「非自己」のみを攻撃・排除するよう作用していますが、これらの免疫系の調節機構に異常をきたしている、いわゆる自己免疫疾患の状態では、「自己」に対する抗体が産生されるようになり、病気の原因のひとつと考えられています。
シェーグレン症候群にかなり特異的に出やすい自己抗体として、抗SS-A抗体が約70%、抗SS-B抗体が約30%という陽性率を示すことがわかっています。
この他に他の自己免疫疾患にもよく診られる自己抗体がみられます。それらはリウマトイド因子(約70%)、抗核抗体(約80%)、抗DNA抗体(2〜3%)などです。
シェーグレン症候群の病変や症状は多様ですが、自己抗体検査についても同様です。自己抗体も全ての患者さんに出るわけではなく、抗SS-A抗体が出ない患者さんが約30%、抗SS-B抗体が出ない患者さんが約70%もあります。
自己抗体の出現は免疫異常の程度を現していると考えられます。したがって、シェーグレン症候群の診断には様々な検査所見を合わせて行う必要があります。
シェーグレン症候群の約30%の患者さんで、白血球が減少することがあります。自己抗体によるものと考えられていますが、普通、白血球減少による免疫力低下などの問題が生じることはありません。
他の原因でも生じ得る所見ですので、専門医による診察が必要です。関節リウマチや膠原病の治療薬には、免疫を調整するものもありますので、これらの影響も考えられます。
シェーグレン症候群の約10%の患者さんで血小板数の減少が現れることがあります。自己抗体によるものと考えられていますが、血小板数が非常に少ない場合(2万以下)は入院、治療が必要です。
他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による診察が必要です。
自分の免疫細胞(リンパ球)が唾液腺に侵入して唾液腺組織を破壊(自己免疫反応)するために唾液の分泌能が低下し、口腔乾燥症(ドライマウス)が発症します。
唾液には食べ物を溶解し、消化する作用、傷を修復する作用、止血作用、口腔内の清浄作用や殺菌作用など多くの作用があります。
唾液分泌量の減少は虫歯・歯周病の発生リスクを高め口腔内の環境を悪化させますので、シェーグレン症候群の患者さんは注意が必要です。
対処法としては、
よくみられる症状として
シェーグレン症候群の口腔乾燥症(ドライマウス)によって、このような障害が現れることがよくあります。
他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による診察が必要です。
唾液には口腔内の清浄作用や殺菌作用があるため、唾液分泌量の減少により虫歯がとても発生しやすくなります。
シェーグレン症候群の口腔乾燥症(ドライマウス)によっても虫歯の増加が現れます。
他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による診察が必要です。
シェーグレン症候群の口腔乾燥症(ドライマウス)によってよくみられる症状です。
口角にカンジダ菌の感染も伴いやすくなります。カンジダ症であれば軟膏をぬるとよくなります。
他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による診察が必要です。
※口角炎:口の両端(口角)にできる炎症
シェーグレン症候群の口腔乾燥症(ドライマウス)による口腔内環境の悪化により舌乳頭の萎縮が起こり、舌の表面が薄っぺらくなり、痛みを伴いやすくなります、カンジダ症も起こりやすくなります。
他の原因でも生じ得る症状ですので、専門医による診察が必要です。
シェーグレン症候群の口腔乾燥症(ドライマウス)があると、水分をよくとるようになり、脱水症状がでることはありません。
全身性の脱水症状は糖尿病や下痢など他の原因があるはずですので、専門医による診察が必要です。
1回の飲水量を増やしても口腔乾燥症(ドライマウス)の改善にはつながりません。
そればかりか、過度の飲水は口腔内の粘液を除去していまい、症状をかえって悪化させてしまう恐れもあります。また、就寝前の大量飲水は安眠を妨げる夜間の頻尿の原因となりますので注意が必要です。
飲水に関しては、うがいや少量ずつ何回かに分けることが症状の緩和に役立ちます。
シェーグレン症候群の症状は患者さんによって様々であり、口腔乾燥(ドライマウス)を感じない方も約10%います。
口腔乾燥(ドライマウス)の感じ方には個人差が大きく、唾液分泌量の低下はさほど強くなくても、ものすごく辛く感じる方もいれば、ほとんど支障を感じないというような方もいます。特に小児の患者さんや20代の若い患者さんでは口腔乾燥(ドライマウス)を感じないのが普通です。
しかし、このような患者さんもでも口腔内や唾液分泌能を精密検査をすると、異常所見が見つかります。
シェーグレン症候群による口腔乾燥症(ドライマウス)で生じる症状としても知られており、因果関係はあります。
唾液には口腔内の清浄作用や殺菌作用があるため、シェーグレン症候群によって唾液分泌量が減少すると口腔内の衛生状態が悪化し、舌乳頭にある味蕾細胞が障害を受けます。このために口腔内に不快な味覚「にが味」の残すことがあります。神経系の異常など他の原因でも生じうる症状ですので、専門医による診察が必要です。
唾液が少なくなると、口腔環境を悪くして舌乳頭が萎縮します。したがって味蕾細胞も障害を受けることになります。口の中が苦くなったり、味が分からなくなったりすることがあります。
このような患者さんが、まれですがおられます。耳下腺はサラサラした漿液を分泌し、他の腺は漿液と粘液の混合液を分泌します。特に顎下腺はネバネバした大量の粘液を分泌します。
年齢とともに顎下腺が先に萎縮しますが、シェーグレン症候群で障害される唾液腺に差があるものと考えられます。いろいろ薬を試してみましたが、未だうまくいっておらず、治療法を探しているところです。
おたふく風邪がウィルス感染症なのに対して、シェーグレン症候群は自己免疫疾患であり、両者の症状は似ていますが、全く別のものです。
一般におたふく風邪で小児や若い人のウィルス感染では一度かかると二度と発症しませんが、免疫が成立するのに対して、シェーグレン症候群は中年の女性が多く、繰り返し耳下腺腫脹がおこることが多く、両者は大きく異なっています。
シェーグレン症候群の耳下腺腫脹は比較的初期段階に見られたり、病気の活動性が高いときにおこる症状ですが、年々この症状がおきにくくなってくるということはあります。
理由は完全には解明されていませんが、おそらく、長い年月にわたって腺組織に炎症が続き、その程度が徐々に低くなることや、組織の線維化が生じ、耳下腺腫脹がおきにくくなるのではないかと推察されます。
涙には角膜の乾燥を防止する以外に、目の表面を保護するなどの重要な多くの役割があるために、涙の減少によって様々な障害が生じます。
代表的な自覚症状としては、
眼乾燥症(ドライアイ)は、日本国内だけで800万人以上いると推定されています。
この大部分は、テレビやパソコンの操作などで生じている現代病的なものであり、これから遠ざかると症状がでなくなる軽い症状が見られるだけであれば、シェーグレン症候群の専門医を受診する必要はないと考えられます。
ただし、
眼乾燥症(ドライアイ)によって乾燥性角結膜炎が生じ、その炎症が強い可能性が考えられます。
角膜表面が傷ついていることは普通には分かりませんが、眼科で蛍光色素やローズベンガル色素で染色するとはっきり分かりますので、専門医による精密検査が必要です。
涙腺が自己免疫によって損傷を受けることで破壊され、涙液の分泌能が低下して眼乾燥症(ドライアイ)が発症します。
涙の働きは、
代表的なものとして以下のものがあります。それぞれ、患者さんによってどれが最も適しているか、向き不向きがありますので、専門医と相談をしながら最も合う方法を見つけていくことになります。
コンタクトレンズを装着するには適正な涙の量が必要で、眼乾燥症(ドライアイ)ではコンタクトレンズを装着すると炎症をおこしたり、角膜の細胞を障害したりします。したがって、慢性的な眼乾燥症(ドライアイ)の状態において、コンタクトレンズは悪影響を及ぼします。
涙は感染防御という重要な役割を担っていますが、慢性的に涙が減少した状態においては、感染が起きやすくなっています。したがって、目薬で湿潤を保ったうえ、装着時間をできるだけ短くすることを心掛けるようにして下さい。また、重度の眼乾燥症(ドライアイ)がある場合には、専門医にご相談下さい。
精密検査をしてみないと判断できませんが、角膜表面の障害によるものが考えられます。
シェーグレン症候群による眼乾燥症(ドライアイ)では涙による保護が低下するため、角膜表面が障害をうけて滑らかでなくなり、光が散乱して物がぼけて見えたり、光の周囲にハローが見えたり、見え方の異常が生じることがあります。
ミクリッツ病を発症しているようなときに、涙腺がはれてまれにこのような症状がおこることがあります。しかし、重症筋無力症など他の疾患でおこる場合がありますので、専門医による検査が必要になります。
シェーグレン症候群によって神経に障害が生じ、このような視覚異常が起ることがありえますが、頻度としてはまれであり、他の疾患で起きている可能性も考えられます。
皮膚乾燥がシェーグレン症候群によって起きているかどうかは議論のあるところですが、皮膚乾燥に対しては、入浴する際の注意が必要です。特に、長時間水に触れることと熱いお湯に触れることは症状を悪化させる可能性があるため、可能な限り短時間で、かつぬるい湯を使うことがポイントです。また、外用保湿クリーム・ローションが有効なことがありますので、症状がひどい場合には専門医にご相談下さい。
皮膚のかゆみは、いろいろな原因による皮膚乾燥時によく見られる症状の一つです。
シェーグレン症候群によって汗腺が障害され皮膚乾燥がおこるとする報告もありますが多くはありません。
中高年では皮脂の低下による皮膚乾燥症もよくありますので原因をはっきりさせるためには皮膚科専門医の診断が必要です。
対処法としては、入浴する際の注意が必要です。特に長時間お湯に皮膚を触れさせることや、熱いお湯に肌をさらすことは皮膚の乾燥症状を悪化させるため、できる限り短時間で、ぬるい湯を使うことがポイントです。
お風呂での石鹸の多用は控えるべきです。また、スキンケア用品や家庭用の加湿器が有効なこともあります。かゆみがひどい場合には、専門医にご相談下さい。
シェーグレン症候群では様々な皮疹がでます。
顔などにできやすい環状紅斑(辺縁が隆起した円状紅色の皮疹)や下肢にできる紫斑(赤い点状の出血斑)が比較的よく見られます。
いずれもシェーグレン症候群の自己免疫反応によって生じるもので、的確な治療を必要としますので専門医を受診して下さい。
シェーグレン症候群の患者さんでは薬剤アレルギーは最も気をつけるべき症状です。
関節リウマチなどの膠原病と比べてもシェーグレン症候群では格段に薬剤アレルギーが多く約30〜60%の患者さんに見られます。
抗生剤や抗リウマチ薬、その他多くの薬に免疫反応を起しやすいことが特徴といってよいと思います。
薬を飲んですぐに皮疹がでるものよりも2〜3日飲んでから手足、体の中心部に痒みを伴った赤い斑点が出て、日を追って広がるものがよく見られます。
強い冷感、感情の起伏などによって、四肢末端(手指、足先)が蒼白になり、次いで紫色になって、ピリピリ痛んだりする状態を「レイノー現象(症状)」といい、シェーグレン症候群の患者さんの約30%に発生することが知られています。
一時的な指先の動脈の収縮により血流が途絶えるためにおこりますが、血流障害が進行して指先が壊死になることはありません。
この症状を引き起こす寒冷刺激や精神的ストレスを回避することが大切であり、特に外気温の低下によって四肢末端が冷えやすい冬場には注意が必要です。膠原病ではよくみられる症状ですので専門医の受診が必要です。
シェーグレン症候群固有の症状ではありません。
レイノー現象は、ほとんどの膠原病で生じる症状であり、強皮症や混合性結合織疾患では90%以上の患者さんに見られます。
強皮症では血流障害が進行性で、指先が壊死に陥ることがしばしばありますので的確な治療が必要です。
一般的には、SPF(Sun Protection Factor:サンケア指数)が15以上の商品が良いとされています。しかし、実際に日焼け止めクリームを塗る際には、化粧品会社がサンケア指数の算出を行った塗布量より少なめに使用する方もいることを考えると、SPF30以上の製品が良いと思われます。
線維筋痛症※とシェーグレン症候群には、慢性的な疲労感が高い頻度で起るなどの共通点があり、実際に合併することがあります。
線維筋痛症が多く診断されるアメリカでは大きな問題になっていますが、両者の関係はまだはっきりしていません。
※線維筋痛症:全身または局所の筋肉が痛む疾患。慢性的な疲労感をともなうことが多く、不眠や不安感など精神症状が現れることもある。
シェーグレン症候群ではまれに微熱程度の発熱が続くことががありますが、その時は疾患の活動性が高いことが考えられますので受診が必要です。
一般の膠原病では発熱がよくみられます。
その他多くの疾患で微熱は出ますので、専門医による精査が必要です。
シェーグレン症候群によって気管粘膜が乾燥すると咳が続くことがあります。また、間質性肺炎の合併によって生じることもあります。 他の原因でも生じる症状ですので、専門医を受診する必要があります。
間質性腎炎がシェーグレン症候群に合併することが時々あります。尿に蛋白があまり出ないので発見が遅れることがありますので、注意が必要です。この場合は強力な治療を必要とします。
様々な原因で生じる疾患ですので、原因の鑑別には専門医による精密検査が必要です。
橋本病(慢性甲状腺炎)とシェーグレン症候群は、両者共に自己免疫疾患であるという共通点があり、合併することがしばしばあります。
橋本病自身が中年の女性の約10%みられる疾患ですが、シェーグレン症候群では20〜30%の人に合併します。
治療は甲状腺の粉末や錠剤を服用することです。
新生児ループスと心ブロックの問題の他には、とくにシェーグレン症候群だからというものはありません。
薬は医師に聞いてから、お酒は原則止める。旅行は控えめに、風疹抗体検査を受ける、などでしょうか?
シェーグレン症候群と不妊の因果関係については、まだはっきりした結論はありません。
シェーグレン症候群に心膜炎が起ることは非常にまれですが、報告はあります。
様々な原因で生じる疾患ですので、原因の鑑別には専門医による精密検査が必要です。
過敏性腸症候群※は腸管の過敏性と過剰反応が主たる要因と考えられますが、シェーグレン症候群との関係は分かっていません。
過敏性腸症候群の診断には原因を精査する必要がありますので専門医による精密検査が必要です。
※過敏性腸症候群:大腸の運動及び分泌機能の異常により発生する疾患の総称で、症状としては下痢、便秘、腹痛などが知られている。
シェーグレン症候群では尿検査で異常が無くても軽い間質性腎炎が起こっていることがあります。
その時は尿の濃縮力が弱り、夜間に薄い尿が多く出るので夜間の尿の回数が増えます。
この場合は専門医の診察を受けてください。しかし、夜間の頻尿は年齢とともに尿の濃縮力の低下でよくあることです。
さらに神経因性膀胱(過活動性膀胱)で過敏性が増し、収縮力が弱り、括約筋が収縮するなどの原因でも起こります。
近年は良い薬がありますので専門医に相談してください。
スプルーは脂肪の吸収障害を伴う吸収不良症候群で、日本ではまれな疾患です。
スプルーは、シェーグレン症候群の合併症ではないと考えられています。ただし、両者ともにDR3と呼ばれる遺伝子型との因果関係があることが指摘されているという興味深い事実があります。すなわち、関連性がないとこれまで考えられてきた両者が、実は遺伝子学的には似ている可能性はあります。
※セリアックスプルー(スプルー):グルテン過敏性腸症とも呼ばれる。小麦粉の主成分のグルテンに対するアレルギー疾患で、腸管の栄養吸収障害を起す消化器の疾患である。
鼻腔粘膜、気管粘膜の乾燥によってこの症状が起きている可能性があり、因果関係を否定することはできません。
様々な原因で生じる症状ですので、原因の鑑別には専門医による精密検査が必要です。
シェーグレン症候群の患者さんで膣乾燥を訴える方は、アンケートでは約20%います。しかし膣自体に分泌腺はなく、膣の入り口にバルトリン腺があり、この障害による乾燥がおこる可能性があります。
しかしこの症状は、更年期障害やエストロゲンの減少など、他の要因の影響も大きいと考えられます。
エストロゲン製剤の投与で症状が改善することがありますので、専門医を受診して下さい。
膣乾燥による膣炎は、更年期障害やエストロゲンの減少など、他の要因の影響も大きいと考えられ、シェーグレン症候群によるものなのか原因の鑑別が必要ですので、専門医を受診して下さい。
白色ワセリンは、以前から眼科用軟膏の基剤として用いられており、眼に対する安全性には問題がないと考えられます。しかし、過敏症や皮膚が赤くなる人は使用すべきではありませんし、長期の使用は注意が必要です。
過敏症以外の副作用はあまりないようです。
過敏症や皮膚が赤くなる人は使用すべきではありませんが、その他の場合は問題はないと考えられます。ただし、長期の使用は注意が必要です。また、白色ワセリンはラテックスゴムを劣化させる恐れがあり、コンドームの易破損性という点では注意が必要です。
骨髄移植後の合併症の一つとして、口腔乾燥症(ドライマウス)が現れます。これは、移植されたリンパ球が唾液腺に侵入して損傷を起こすことで唾液の分泌能が低下して生じる症状です。したがって、シェーグレン症候群とは別の病状ですが、その機序はシェーグレン症候群と非常に似ていると考えられます。